溺愛執事に花嫁教育をされてしまいそうです
とりあえず、この状況は、ありすには、
対処できる状況ではない、とそう判断し、
橘はどこに行ったのだろうと、
ありすが視線をきょろきょろと動かすと、
別の人物と目が合ってしまう。
「ああ、ありすさん。こちらに居たんですね」
そう言うと笑顔でこちらに来たのは、
先ほどのシロツメグサの彼、那賀園 駿だ。
「おや、駿君」
どうやらこちらも知り合いだったらしい、
藤咲がにっこりと笑って会話をする。
「ああ、藤咲先生。
いつも父を御贔屓いただきまして
ありがとうございます」
「いや、父君の活ける花は
芸術品だからね。
この前も米国からの要人の訪問に合わせて
用意してくださった見事な花に、
向こうも大変喜んでいたという話を
聞いていますよ。
それに駿君の実力も相当なものだと……」
状況が分からなくて目を丸くしている
ありすの耳元で、瀬名が囁く。
「那賀園家、と言われてわかるか?
あの男は、華道の家元の子息で、
次期後継者、と言われているんだが……」
華道だの芸術だのと言うのは、
俺にはさっぱりわからないと、瀬名は軽く肩を竦める。
「……というわけで退屈だろう?
せっかくだから、これから俺とデートでもするか?」
と言われた瞬間、肩を抱かれて、
ありすは突然のことに固まってしまった。
「瀬名社長、ちょっと待ってくださいよ。
ありすちゃんにデートを申し込もうって
オレが思ってたんですけど」
いきなり口調を砕けたものにして、
駿がありすにウインクを飛ばす。
「少なくとも、瀬名社長よりは
オレの方が何歳か若いですしね。
年もオレの方が釣り合うんじゃないんですか?」
口調を変えると、駿のイメージは
ぐっと若くなり、
実年齢もそうなのであろう。
ありすと幾つも年が違わないように思えた。
「困ったな。私もありすさんを
ピアノコンサートにお誘いしようかと思ったんですが……」
そっとありすの手を取って、
藤咲がその手の指先にキスを落とす。
「──っ」
ありすは突然の事に言葉を失う。
さっきまで紳士のようにみえたのに、
藤咲の変容にびっくりして言葉も出ない。
(橘さんっ。何がどうなっているのかわからないです。
助けに来てくださいっ!!!!)
ありすは声すら失って、
ひたすら橘を視線だけで探し続けていたのだった。
対処できる状況ではない、とそう判断し、
橘はどこに行ったのだろうと、
ありすが視線をきょろきょろと動かすと、
別の人物と目が合ってしまう。
「ああ、ありすさん。こちらに居たんですね」
そう言うと笑顔でこちらに来たのは、
先ほどのシロツメグサの彼、那賀園 駿だ。
「おや、駿君」
どうやらこちらも知り合いだったらしい、
藤咲がにっこりと笑って会話をする。
「ああ、藤咲先生。
いつも父を御贔屓いただきまして
ありがとうございます」
「いや、父君の活ける花は
芸術品だからね。
この前も米国からの要人の訪問に合わせて
用意してくださった見事な花に、
向こうも大変喜んでいたという話を
聞いていますよ。
それに駿君の実力も相当なものだと……」
状況が分からなくて目を丸くしている
ありすの耳元で、瀬名が囁く。
「那賀園家、と言われてわかるか?
あの男は、華道の家元の子息で、
次期後継者、と言われているんだが……」
華道だの芸術だのと言うのは、
俺にはさっぱりわからないと、瀬名は軽く肩を竦める。
「……というわけで退屈だろう?
せっかくだから、これから俺とデートでもするか?」
と言われた瞬間、肩を抱かれて、
ありすは突然のことに固まってしまった。
「瀬名社長、ちょっと待ってくださいよ。
ありすちゃんにデートを申し込もうって
オレが思ってたんですけど」
いきなり口調を砕けたものにして、
駿がありすにウインクを飛ばす。
「少なくとも、瀬名社長よりは
オレの方が何歳か若いですしね。
年もオレの方が釣り合うんじゃないんですか?」
口調を変えると、駿のイメージは
ぐっと若くなり、
実年齢もそうなのであろう。
ありすと幾つも年が違わないように思えた。
「困ったな。私もありすさんを
ピアノコンサートにお誘いしようかと思ったんですが……」
そっとありすの手を取って、
藤咲がその手の指先にキスを落とす。
「──っ」
ありすは突然の事に言葉を失う。
さっきまで紳士のようにみえたのに、
藤咲の変容にびっくりして言葉も出ない。
(橘さんっ。何がどうなっているのかわからないです。
助けに来てくださいっ!!!!)
ありすは声すら失って、
ひたすら橘を視線だけで探し続けていたのだった。