溺愛執事に花嫁教育をされてしまいそうです
橘はありすに、男性たちと
二人きりで会うことを提案した。
その表情は
やはり穏やかな笑みを浮かべていても、
本音が見えなくて、ありすは橘が
本当はどう思っているのか知りたいと思う。

「でも……私、男性と二人きり、
になんてこと、なった事もないし……」
眉を下げるありすをみて、
橘は緩やかに手を伸ばし、
そっと先ほどまで
梳っていたありすの髪を撫でた。

「──っ」
その柔らかい指の動きに、
ありすは呼吸が止まりそうになる。

「……大丈夫ですよ。
先ほどの男性方はどなたも紳士だと思います」

「……瀬名さんでも、ですか?」
強引な仕草でありすを抱き留めた
男性を思い出し、眉をしかめた。

そんなありすを見て、橘は笑みを浮かべた。

その表情があまりにも綺麗だったから、
ありすはつい、橘の笑みに見惚れてしまう。

「……ええ、瀬名社長は
強引な手腕で有名な方ですが、
それでも人の気持ちのわかる方だと
いう評判ですから」

「わかりました、でしたら、
一番最初に会った、那賀園さんから
順番に一度ずつ会ってみる事にします」

ありすの言葉に、
橘は穏やかな笑みを浮かべる。
だがその表情は、儀礼的で
どこか冷たいものであることに
ありすは全く気づいてなかったのだった。
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