溺愛執事に花嫁教育をされてしまいそうです
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「しゅんくん」
私の声に、彼ははっと顔を上げた。

「……しゅんくん、ないてたの?」
私がそう尋ねると、しゅんくんは、
慌てて顔の辺りを拭う様な仕草をする。

「おにいちゃんだぞ、泣いているわけ
ないじゃんか」

そう言うと、しゅんくんはにっこりと
少しだけ赤い目をして笑う。

「……じゃあウサギさんみたい」
幼稚園にウサギはこんな色の目をしている。

「……ウサギさんか。じゃあきっとニンジンが好きだね」
屈託なく笑うその顔は、既に赤い瞳ではなくて。

「ありす、何しているの?」
泣いているかもしれないしゅんくんに、
私は何かしてあげたくて、シロツメグサの
冠を一生懸命に作ろうとする。

「……ないしょ」

そう答えた私を見て、きっとしゅんくんは、
何をしようか全部わかっているんだと思う。

だけど、そうか~と言って、
明るいパーティ会場を見つめる。

夕方から始まったパーティは
既に日暮れになっていても続いている。

きっと終わるまでは結構な時間が掛かる。
お気に入りのドレスを着てきたことも、
今となってはどうでも良くなってきている。

「じゃあ、楽しみに待ってる」
優しく笑ってくれるしゅんくんがいるから、
だから、いいかな、と思って、
私はせっせと花を編み続ける。

きっとこの花冠をかぶせたら、
しゅんくんは嬉しそうに、どこか恥ずかしそうに笑うから。

(しゅんくんは、王子さまみたい)
綺麗な横顔を見て、
私はドキドキする鼓動を、
理由も知らずに感じていたのだった。


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