溺愛執事に花嫁教育をされてしまいそうです
「ついたよ。お疲れさま」
そう駿が声を掛けたのは、
それから30分ほど経っての事だった。
そして駿が連れてきたのは、
都下にある、大きな植物園だ。

自らメットを脱いで、ありすにも、
脱ぐように声を掛けたものの。

「あれ?」
ありすは地面に立つと、さっきまでの
ぐらぐらしていた感覚が抜けなくて、
ふわふわと姿勢が泳いでしまう。

それまで乗っていたバイクの上で、
緊張し続けていた体は思うように動いてはくれない。

「ごめん、慣れないバイクに疲れちゃった?」
メットを置いて、ありすを抱き留めると、
くすっと笑って、メットを抜かしてくれる。

ふわふわしているありすの髪を直しながら、
さりげなく額にキスを落とす。

「──っ」
慌てて、おでこを抑えるありすをみて、
瞳を細めて、悪戯っぽく瞳を輝かせると、
メットを預かり、

「ちょっとそこに座ってて。
メット、ロッカーに預けてくる」
ベンチに彼女を案内すると、
駿はそのままメットを預けに行ったのだった。


ほどなく駿が戻ってきたころには、
大分ふらつきは収まっていたけれど。

「うーん、なんとなく足元が危なっかしいね。
帰りはバイクは誰かに預けて、車を呼ぶことにしようか」

その言葉に、ありすは心の底からホッとして、
ようやく笑顔を浮かべることが出来た。

「ふふっゴメンね。
どうもおとなしいタイプだって思われがちだからさ、
意外性を演出、なんて思ったけど、
返って君を疲れさせちゃったみたいだね。

でも、これも俺。
ってことで、
じゃあここからは
世間様の俺のイメージ通りで……」

駿はニヤリといたずら小僧の様に笑って、
ありすの頬を突く。
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