溺愛執事に花嫁教育をされてしまいそうです
屈託のない様子は、この間あった時の
大人びた雰囲気とは違っていて、
実際は何歳か年上なのに、
親しみやすくて、妙にあどけなく見える、
明るい笑顔に、ありすもつい笑みを浮かべ、

「本当に、びっくりしました。
ちょっと……怖かったんですよ?」
少し本音を漏らすことが出来た。

「そうなんだ。でもぎゅっと抱き着いてくれる
ありすちゃんの様子が凄く可愛くて……。
俺はちょっと作戦成功、とか思っちゃった。

なんだかさ、
守りたくなっちゃうんだよね、
ありすちゃんって……」

長身な駿が、
身を屈めるようにして、耳元で囁く様子に、
ありすは何故か、ドキドキしてしまった。

急に先ほどまで触れていた、
女性の体とは違う、
すんなりとしていても、
ごつごつと硬さのある腰回りや、
固くて平らなお腹の辺りの感触を
脳裏に思い出して、
改めて、男の人と二人きりで、デートしているんだ、
というその事実を思い知らされる。

「あっ……あの、
今日は何を見に行くんですか?」
「そうそう、この間、シロツメグサを
喜んで受け取ってくれたから、
きっと君は花が好きだろうってそう思って……」

気づけばどこか、
恋の始まりを予感させるような、
仄かに甘い会話を続けていた。

「あ、この間のお花、
ありがとうございました。
すごく……すごく素敵でした」
御礼状は送った物の、
改めてお礼を言うと、

「皆、綺麗な花ばっかりだったよね。
気に入ってくれたら嬉しいな。

……ってここに入ろうか?」

そういって連れてこられたのは
ガラスでできた大きな温室だった。

「……ここはバラ園が見事なんだけど、
今はまだ咲いてないから。
でも、温室の中は、暖かいし
いつでも花も植物も見ごろだし、
いいかなって思って」

そういうと、さりげなく手が伸びてきて、
ふわりとありすの手のひらを捕らえる。

「…………」
思わず視線を上げると、にっこりと笑った
駿と視線が合う。

「じゃ、行こう」


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