溺愛執事に花嫁教育をされてしまいそうです
執事の花嫁教育レッスン【2時間目】
リムジンで自宅まで送ってもらうと、
玄関先には、橘が迎えに出ていた。

「ちゃんと……お嬢様はお約束通り、
お返ししましたから」
どこか挑戦的に瀬名が言うと、
橘は丁寧に頭を下げて見せた。

「瀬名様、ありがとうございました。
お嬢様、おかえりなさいませ……」

ありすも小さく会釈をして、
橘の方に歩を進めた途端、
ふわりと手首を掴まれて、
振り向いたありすの頬を
ふわりと撫でて、瀬名が耳元で囁く。

「ありすちゃん。
今度はもう少し大人のデートをしよう」
どういう意味ですか、とありすが尋ねるより先に、
ぽんぽんとあやすように頭を撫でて、
瀬名はリムジンの中に姿を消した。


******************


「はぁ……」
お風呂に入って、一息ついたありすは、
ぼうっと天井を見上げる。

もう、先ほどまで
傍らに感じた煙草の匂いもなくなった。
ドキドキさせるような囁きも、
記憶の中で少し整理できたような気がする。

だけど……。
今日のドキドキした気持ちは、
果たして恋の始まりなんだろうか?

(経験が無さ過ぎてよくわからないな)
小説の中では、
ヒロインはヒーローにドキドキして、
それが恋の始まりだけど……。
そんな安易に恋は始まってしまう
物なんだろうか?

ふとそんなことを思っていると、
ありすの自室のドアが控えめに叩かれた。
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