溺愛執事に花嫁教育をされてしまいそうです
「……でも……」
ありすは、彼の声音を聞くうちに、
それでもいいのかもしれない、と思えてきてしまう。
でも……。
「私がもし、その人達と素敵な恋が出来なかったら。
その時は……」
「──その時は?」
どこか儚い様な、ありすを甘やかすような声で、
男性は答える。
「……その時は、私を逃してくださいますか?」
じっと見上げた瞳は、目の前の知らぬ男性を信頼する
そんな無垢な瞳の色で。
そっと伸ばされた汚い物など何も触れたことのない、
真っ白な手を見て、再び、ありすの瞳に視線を戻す。
しかし、男性は一瞬ありすの無垢な瞳の強さに負けて、
気づかれないように、微かに視線を逸らした。
「……ええ、わかりました。
その時は私が貴女を逃して差し上げます……。でも」
男性は言葉を止めて、小さく微笑みを浮かべる。
「その前に、私は貴女が素敵な恋をする
お手伝いをいたしましょう。
恋を何一つ知らない貴女の為に、デートの受け方から
……相手の男性を翻弄する仕草まで。
なんでも教えて差し上げます。
ですからお屋敷に戻りましょう。
ここではお嬢様が冷えてしまいますから……」
「……でも……」
それでも抗うそぶりをするありすに、
男性は妖艶に瞳を細めて、誘惑するように微笑む。
思わず身近で見る男性の蠱惑的な笑みに、
ありすはぼうっとしてしまう。
「──ご安心ください。
私がなんでもお嬢様に、教えて差し上げます。
貴女が花嫁になるその日まで……。
必要な事はすべて……」
ありすは薄暗闇の中で聞こえる男性の声に、
先ほどまでの不安だった気持ちが
少しずつ収まっていく感覚を覚えていた。
「あの……貴方は誰なの?」
ゆっくりと手を引き寄せられて、間近に見える
端正な顔立ちをじっと見上げながら、
浮かされたようにありすは尋ねていた。
「私は、本日付で久遠寺の執事を
させていただく事になりました、橘、と申します。
ありすお嬢様にの為に、
粉骨砕身する所存でございます。
以後お見知りおきを……」
************
ありすは、彼の声音を聞くうちに、
それでもいいのかもしれない、と思えてきてしまう。
でも……。
「私がもし、その人達と素敵な恋が出来なかったら。
その時は……」
「──その時は?」
どこか儚い様な、ありすを甘やかすような声で、
男性は答える。
「……その時は、私を逃してくださいますか?」
じっと見上げた瞳は、目の前の知らぬ男性を信頼する
そんな無垢な瞳の色で。
そっと伸ばされた汚い物など何も触れたことのない、
真っ白な手を見て、再び、ありすの瞳に視線を戻す。
しかし、男性は一瞬ありすの無垢な瞳の強さに負けて、
気づかれないように、微かに視線を逸らした。
「……ええ、わかりました。
その時は私が貴女を逃して差し上げます……。でも」
男性は言葉を止めて、小さく微笑みを浮かべる。
「その前に、私は貴女が素敵な恋をする
お手伝いをいたしましょう。
恋を何一つ知らない貴女の為に、デートの受け方から
……相手の男性を翻弄する仕草まで。
なんでも教えて差し上げます。
ですからお屋敷に戻りましょう。
ここではお嬢様が冷えてしまいますから……」
「……でも……」
それでも抗うそぶりをするありすに、
男性は妖艶に瞳を細めて、誘惑するように微笑む。
思わず身近で見る男性の蠱惑的な笑みに、
ありすはぼうっとしてしまう。
「──ご安心ください。
私がなんでもお嬢様に、教えて差し上げます。
貴女が花嫁になるその日まで……。
必要な事はすべて……」
ありすは薄暗闇の中で聞こえる男性の声に、
先ほどまでの不安だった気持ちが
少しずつ収まっていく感覚を覚えていた。
「あの……貴方は誰なの?」
ゆっくりと手を引き寄せられて、間近に見える
端正な顔立ちをじっと見上げながら、
浮かされたようにありすは尋ねていた。
「私は、本日付で久遠寺の執事を
させていただく事になりました、橘、と申します。
ありすお嬢様にの為に、
粉骨砕身する所存でございます。
以後お見知りおきを……」
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