もう一度、あなたに恋していいですか
「昨日、行けなくてごめんな」

圭介さんと私は会社から少し離れた洋食屋に入り注文を済ませたあと、彼の第一声がそれだった。

「ううん、仕方ないよ。何か急用があったんでしょ?」

「ああ。子供が熱だしちゃって、病院連れていってた」

ああ…子供、か。
確かまだ3歳だっけ。

家族を優先するのは当たり前。
なのにそれが”お前は一番じゃない”って言われているみたい。

「それなら仕方ないよ。大丈夫だった?」

「ああ、お陰で。いまは落ち着いているよ」

「…そう、良かった」

まわりを見渡すとお昼ご飯のピークが過ぎた時間だが、店は満席近い状態だ。
会社の近くにこんな店があったなんて知らなかった。

「この店最近見つけたんだけど、意外と知られていないみたいで会社の人もほとんど見かけたことないんだ。だからずっと連れてきたいと思ってた」

そんなこと言うなんてずるい。
舞い上がっちゃうよ。

「ありがとう」

そう言うと彼はいつもの優しい笑顔で笑う。

ああ。
その腰に腕をまわして、彼の胸に埋もれたい。
なんて考えちゃう。

そんな妄想をしていると”お待たせしました”と店員さんが料理を目の前に置いていく。
フワッと香るケチャップの匂いが、私の空いたお腹を刺激する。
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