もう一度、あなたに恋していいですか
「圭介さん…っ」

私は駅の出口で空を見上げながら立ち往生する彼に駆け寄る。

「ごめん、むかえに来させて。料理中だったよね」

「ううん大丈夫。あとは焼くだけだから。傘持ってきたよ」

私は手に持っていた濡れていない方の傘を差し出す。

「一本で良かったのに」

「そういうと思ってたけど、一応」

私がそう言うと、彼は私の髪をくしゃっと撫でて笑う。

「帰ろうか」

「うん」

私は閉じた傘を再び開こうとしたとき、私たちの後ろから声が聞こえた。

「あれー…松岡さん？」

名前を呼ばれて驚いて肩がビクッと震える。
一瞬会社の人に見られたのかとゾクッとしたが、この声は…

恐る恐る後ろを振り返ると、案の定会社帰りの三枝さんだった。

「奇遇ですね。…彼氏さんのお迎えですか？」

三枝さんは圭介さんの方を横目でちらっと見ながら、そう問いかける。

よりによって圭介さんと一緒に居るときに会うなんて。
この人、圭介さんに変なこと言わないでしょうね。

「…まあ、そんなところです」

「仲良いんですね～羨ましい。こんな可愛い彼女をゲットできた彼氏さんが羨ましいですよ」

わざとらしく圭介さんに突っかかっていく三枝さんを睨み付けると、三枝さんは面白そうに笑みを浮かべた。

「…でしょう。可愛いくて仕方ないですよ」

「ちょっと…圭介さん！」

私は構わなくていいという合図で首をふると、圭介さんは笑って私の頭を撫でる。

「だからちょっかいかけないでくださいね。彼女は僕のなので。一本余ってるので良かったら傘どうぞ。いこっか未羽」

「え…っ」

圭介さんは三枝さんに傘を渡し、私の手を引き駅の前をあとにした。
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