もう一度、あなたに恋していいですか
7時25分。

私はいつも通り家を出る。
鞄から部屋の鍵を取り出したタイミングで、隣の部屋の扉が開く。

「ああ、松岡さんおはようございます」

「…おはようございます」

予想通りの遭遇に私は冷静に対処する。

「これ昨日お借りした傘、お返しします。ありがとうござい…ごほっ…ました」

咳き込む彼から傘を受けとるとき、手が軽く触れる。
あれ、熱い…?

「三枝さん、もしかして熱あるんじゃ」

「まさか…」

そう言った瞬間、彼はバランスを崩し壁にぶつかってずり落ちる。

「ちょっと!大丈夫ですか?」

壁にもたれかかる彼に駆け寄り額に手を当てるとかなり熱く、高い熱があるようだった。

「かなり熱ありますよ。そんなんじゃ仕事無理ですよ!」

「大丈夫大丈夫。なんとか…なりますから」

彼が一人で立ち上がろうとすると、熱で朦朧としているのか上手く立てないようだ。

「仕事休んでください。部屋戻りましょう。私が肩貸しますから」

「……わかりました」

かなりぐったりしていて、支えがないと歩けないくらいのようだ。
額に汗がにじんでいる。

昨日の今日で風邪を引いたということは、雨のせい?
でも傘貸したのに、何故だろう。

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