もう一度、あなたに恋していいですか
「”あい…り……”」

彼は私を見つめてそうつぶやく。

「三枝…さん?」

今にも泣きそうな、いつもの感じからは想像できない切ない表情を浮かべて、私の左手首を握りしめている。

「”あいり”…行かないでくれ…お願いだ…」

”あいり”
聞き覚えのない女性の名前だった。
熱で朦朧として判断がつかないのだろう。
私をその”あいり”さんと勘違いしているの?

ふいに左手首を握りしめている力が弱まる。
眠ってしまったようだ。

”あいり”さんというのは、彼女だろうか。
なんだ、ちゃんと彼女がいるんじゃない。

なのに、なんであんな悲しそうな表情…

眠る彼の表情をしばらく見つめて、私はスーパーマーケットへ行くため部屋をあとにした。

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