日常に、ほんの少しの恋を添えて
「絶対反応すると思ったんだ。この間会ったとき、『誰?』って顔で見てたもんね、美鈴のこと」

 くううう……この人の策略にまんまとハマったのが悔しい……
 でもその気持ちを押し込めて、私は平常心を装った。

「いえ、別に……私には関係ないことですから」
「またまた。湊とあんなに仲良さそうに買い物してたのに、あれで何でもないなんて言うわけ? 俺にはどうやったって恋人同士にしか見えなかったよ」
「……」

 そ、そうなの? 第三者にはそう見えてたの? わからん……自分じゃわからん……

「そう。だからきっと知りたいだろうなって思ってたんだ。だから君には教えてあげるよ。今は俺の彼女だけど、あの子は湊の元カノだよ。ま、うすうす勘づいてたかもしんないけどね」
「……それは専務から聞きました」
「そっか。なら話は早い」

 ソファーに腰掛ける小動さんが長い脚を組み変えた。

「俺が湊から奪った、というか彼女が湊を振ったのかな」
「美鈴さんが……振ったんですか? 専務を」
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