日常に、ほんの少しの恋を添えて
 意外な展開に、素で驚き変な声が出てしまった。
 なんで? 
 私が眉根を寄せると、「だろ?」言いたげに小動さんの眉が上がる。

「俺と美鈴は湊を介して会ったことがあって、顔見知りではあったんだ。たまたま遭遇したときにちょっと相談事を持ちかけられて。何度か会って話を聞いているうちに、彼女が湊に対して不満を持ってることが分かってね。俺もその頃には完全に美鈴のこと好きになってたし、俺に乗り換えちゃえよって勧めたんだ。そしたら美鈴は湊を振って俺んとこ来たの」

 まさか本当に来るとはね、と小動さんは笑う。

「そ、その時湊専務は……」
「最初は困惑してたけどね。俺も美鈴が湊じゃなくて俺を選んでくれたことで有頂天になったよ。湊が傷つくことわかってたのに、やっと湊に勝った! みたいに優越感に浸った。でもその気持ちが落ち着くと今度は湊に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになった。今でも罪悪感はほんのちょっと残ってる」

 そう語る小動さんの表情がちょっとだけ寂し気に見えた。

「……美鈴さんは、専務のどこに不満を抱いたんでしょうか。専務の人柄からは想像がつかないのですが」
「人柄は問題ない。しいて言えば優しすぎるくらいで。あの頃湊は留学を終えて社会人になったばかりだった。もともと学生時代の成績も優秀だったし、これからの藤久良を奴の兄貴と共に背負うだろうと周囲から期待されていたんだ。ものすごく」

 それは、御曹司なら仕方ないのかな、とも思うけど……

「だからだよ。美鈴より仕事を選ばざるを得なかったんだ。それが積もり積もって美鈴の不満が爆発したわけ。あの頃の湊にとっては仕事が第一。恋愛は後回しだったんだ」

 
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