日常に、ほんの少しの恋を添えて
 調子に乗って続けざまに質問する私に、専務が鋭い視線を投げかける。

「バレました? でも少しだけですよ」
「……美鈴は料理しないからな。いやそれ以前に、美鈴はここにはあまり来なかった。会って食事をするときはいつも外だったし」

 専務の話を聞いていて、はあ、そうですか。としか言えなかった。

 洗濯をしたりして寝室に戻ってみると、専務がおかゆを綺麗に平らげてくれてあった。薬を飲むためのお水を渡し、飲み終えたのを確認してから、空いた食器などを持って私は立ちあがる。

「えーと。じゃあ私掃除とかキッチンの片付けとかしますね。もしよければ夜の分のおかゆか雑炊作りますけど、どうしますか」
「雑炊がいい。頼む」
「わかりました。何かあったら呼んでくださいね」

 私がこう言うと専務が片手を上げる。

 寝室を出てキッチンで洗い物をしていると、なんだか私専務の奥さんになったみたいだなと思ってしまった。
 結婚てきっとこんな感じなんだろうなーなんて、ちょっと想像してしまう。

 ――いや、ありえない。ありえないから……

 それからは雑念を振り払い、作業に没頭した。洗い終わった洗濯物を乾燥機にかけ、軽く部屋の掃除をして夕飯の雑炊を作った。
 本当にシンプルな玉子雑炊だけど。
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