日常に、ほんの少しの恋を添えて
 私の返事にちょっとだけ微笑むと、美鈴さんは再び口を開く。

「だよねえ……ショッピングモールで仲良さげに買い物してた時、あなたたち完全に恋人同士にしか見えなかったし」
 
 小動さんにも言われたけど、そんなに仲良く見えたのかな……

 私が返答に悩んでいると、美鈴さんはまたクスッと笑う。

「いいわね。私と付き合っている時、湊はあんまりリラックスしているようには見えなかったから。貴女と一緒にいる湊を見たとき、ちょっと羨ましかったの」
「え、そうなんですか。それはどうして……」
「湊の親と私の親が知り合いでね。それが縁で紹介されてそのまま付き合うことになったんだけど……湊はいつも私と接するときはどことなく緊張してた。優しくはしてくれたけど、なんていうかあまりプライベートなところまで踏み込ませてはくれなかった。私はそれが寂しかった」

 美鈴さんが寂し気な表情をする。さっきまで強気な印象だったのに、急な変化に戸惑ってしまう。
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