日常に、ほんの少しの恋を添えて

「それは……彼氏だったらちょっと寂しいですね……」
「まあ、仕方ないわよね。親の紹介で知り合ったから、私と何かあれば親同士の縁にもひびが入りかねなかったし。湊なりに随分気を遣ったんじゃない。今思うと私もそのことに気が付けばよかったんだけど……私は湊が仕事ばっかしててあんまり構ってくれないから、そのことに腹を立ててばかりいたわ。その上湊の友人の小動に乗り換えたんだからひどい女よね。今でも申し訳なかったと思ってる」

　そのあたりは小動さんから聞いて知っているので、私は敢えてその辺の事情については触れず。
　美鈴さんも、なんで何も言わないの、とかそういったことは言ってこなかった。

　この人も小動さんと一緒で、専務に対しての罪悪感を未だ持ち続けているのか。

「湊には早くいい人見つけて幸せになってもらいたいんだけど、私と別れて以来どうも恋人と呼べるような人がいなかったから。で、ようやくいい感じの女性が現れて私も小動も一安心ってね。で、つまり何が言いたいのかというと、湊と付き合うなら、彼の立場を十分に理解した上で、じゃないとうまくいかないわよ！ってこと」
「ええ、あの、私特にそんなことは望んでいませんので……」