日常に、ほんの少しの恋を添えて
「好きだった人を友人に取られちゃったのに、そんな風に思えるって専務すごいですね。多分私が同じ立場だったら、つらいです」

 ベッド脇で立ったまま私がそう言うと、専務が好きな人か……と呟く。

「どうなんだろうな。あの時は確かに美鈴が好きだったよ。でも余裕がなさ過ぎて、彼女の理想としていた彼氏にはなれなかった。そんな自分に嫌気が差していた時に美鈴が離れて行って……ショックではあったけど、もう『理想の彼』を目指さなくていいんだって思ったら、彼女には申し訳ないがちょっとだけホッとしたんだ。だから小動に対して、そんなに付き合いにくさを感じないのかもしれないな」

 人の気持ちはそれぞれだから、いろいろある。それは仕方のないことだ。
 過去にいろいろあったとしても、今現在専務が傷ついたり、思いを引きずっていないなら、それでいいんじゃないかな。
 少なくとも私はそう思うけど。

「……専務みたいな色男でも、恋愛ではいろいろあるんですね」
「ああ~?」

 何気なく呟いた言葉に対し、眉根を寄せ専務が敏感に反応する。

「どこが色男だどこが……お前がどう思ってるか知らないが、俺は恋愛の経験値はさほど高くないんだ。かくいうお前はどうなんだよ」
「え、私ですか? だいたいお分かりかと思いますが、それほど経験はありません」
「そうなのか」
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