日常に、ほんの少しの恋を添えて
「朝なのは出勤前に立ち寄ったからで特に意味はないよ。実はな、まだ決定ではないがどうやら父さんが社長から退くつもりでいるらしい」
お兄さんの言葉に、専務の顔色が変わった。
「え。本当に?」
「ああ。俺にそれとなく言ってきたよ。父さんも年だ。最近は体力の衰えをよく口にするようになってな」
「そうか……最近は体調もあんまり良くないようなこと母さんも言ってたし……」
神妙な顔で話す二人を見て、私はここにいていいのだろうか、とキッチンの隅でどきどきする。
どうしよう、バスルームにでも避難しようかな……
そう思って一歩踏み出したところで、再びお兄さんが口を開く。
「で、だな。本題はここからだ。湊、お前うちに来ないか」
「え?」
――えっ?
お兄さんの口から出た思いもしない言葉。
驚いた専務がお兄さんを凝視するのと、キッチンにいた私が振り返ったのはほぼ同時だった。
「リゾートでのお前の仕事ぶりは聞いている。父さん達の考えではもう少しお前には関連会社で経験を積ませる予定だったらしい。だがさすがに父さんも自分の体調不安もあってお前のことが心配になったんだろう。そろそろこっちに呼び寄せてはどうだ、と俺に言ってよこしたよ」
「いや……急にそんなこと言われても、俺にだって今抱えてる案件があるんだ。それが片付くまではリゾートを離れることはできない」
「もちろん、それが片付いたらでいい。俺もお前と一緒に仕事がしたいと思ってるんだ。お前がうちに来るのを待ってるよ」
お兄さんの言葉に、専務の顔色が変わった。
「え。本当に?」
「ああ。俺にそれとなく言ってきたよ。父さんも年だ。最近は体力の衰えをよく口にするようになってな」
「そうか……最近は体調もあんまり良くないようなこと母さんも言ってたし……」
神妙な顔で話す二人を見て、私はここにいていいのだろうか、とキッチンの隅でどきどきする。
どうしよう、バスルームにでも避難しようかな……
そう思って一歩踏み出したところで、再びお兄さんが口を開く。
「で、だな。本題はここからだ。湊、お前うちに来ないか」
「え?」
――えっ?
お兄さんの口から出た思いもしない言葉。
驚いた専務がお兄さんを凝視するのと、キッチンにいた私が振り返ったのはほぼ同時だった。
「リゾートでのお前の仕事ぶりは聞いている。父さん達の考えではもう少しお前には関連会社で経験を積ませる予定だったらしい。だがさすがに父さんも自分の体調不安もあってお前のことが心配になったんだろう。そろそろこっちに呼び寄せてはどうだ、と俺に言ってよこしたよ」
「いや……急にそんなこと言われても、俺にだって今抱えてる案件があるんだ。それが片付くまではリゾートを離れることはできない」
「もちろん、それが片付いたらでいい。俺もお前と一緒に仕事がしたいと思ってるんだ。お前がうちに来るのを待ってるよ」