日常に、ほんの少しの恋を添えて

『もう……そんなの海外でもどこでもついていけばよかったのに。せっかく両想いになったのに何やってんだか……金髪美人に湊取られても知らないからね』

　言いながら呆れたように私を見る美鈴さん。そんな彼女をなだめつつ、小動さんが会話に割って入る。

『志緒ちゃん若いし、色々決断するには時期尚早だったんだろ。お互い好きだけど、今は恋愛じゃなくて仕事を精一杯やりたいって、いいじゃないの。俺応援するよ？』
『ありがとうございます……』

　私が苦笑すると、美鈴さんが一歩前に出て、私に顔を近づけた。

『湊に会うことがあったら言っておいて。私と小動は先に結婚して幸せな家庭築いちゃうから、湊は本当に自分の好きな女と結婚できたらいいわねって。親の薦めじゃなくて、自分の意思で決めた相手とね』
『み、美鈴さん』
『ま、いつ会えるのかすら不明だけどね……言えたらでいいわよ』

　美鈴さんが最後にぼそっと言った言葉に、ギクッとする。
　ほんとにそうなんだよね。会える日は来るのか……約束も何もないから、そんな日が来るのかなんてもはや夢だ。