日常に、ほんの少しの恋を添えて
だけど三年が経過しても、私は藤久良湊以外の男性を好きになることはなかった。
何もなかったわけでもない。他部署の男性から声をかけられたり、食事の誘いをいただいたこともある。だけどその気になれなくて、結局すべてお断りしてしまった。
なんとなくだけど、私はあの人以外の人を好きになることはないんじゃないかな。と思っている。
こんなことを思っていた私ではあるが、それから数日後。思いがけない事態に直面する。
なんと、私が担当している河出専務が、藤久良商事の藤久良副社長と会食をすることになったのだ。もちろん担当秘書である私も一緒に。
この藤久良副社長とは、湊さんのお兄様。私が湊さんのマンションで会った、あの方だ。
藤久良という名前と湊さんのお兄さんという事実だけで、本人がそこにいるわけでもない。だけどこの会食のことを聞かされたときから、私はそわそわして落ち着かなかった。
「……長谷川さん、手帳さかさまだよ」
「ええっ!?」
ホテルに向かう車の中で、ぼーっとしてるところを専務に指摘され、羞恥で顔が熱くなる。
「す、すみません」
「珍しいね。長谷川さんでもぼんやりすることあるんだね」
ははは、と河出専務が優しく笑う。前の湊専務も優しかったけど、この河出専務もとても温厚で、話しやすい方だ。私はつくづく上司に恵まれてると思う。
何もなかったわけでもない。他部署の男性から声をかけられたり、食事の誘いをいただいたこともある。だけどその気になれなくて、結局すべてお断りしてしまった。
なんとなくだけど、私はあの人以外の人を好きになることはないんじゃないかな。と思っている。
こんなことを思っていた私ではあるが、それから数日後。思いがけない事態に直面する。
なんと、私が担当している河出専務が、藤久良商事の藤久良副社長と会食をすることになったのだ。もちろん担当秘書である私も一緒に。
この藤久良副社長とは、湊さんのお兄様。私が湊さんのマンションで会った、あの方だ。
藤久良という名前と湊さんのお兄さんという事実だけで、本人がそこにいるわけでもない。だけどこの会食のことを聞かされたときから、私はそわそわして落ち着かなかった。
「……長谷川さん、手帳さかさまだよ」
「ええっ!?」
ホテルに向かう車の中で、ぼーっとしてるところを専務に指摘され、羞恥で顔が熱くなる。
「す、すみません」
「珍しいね。長谷川さんでもぼんやりすることあるんだね」
ははは、と河出専務が優しく笑う。前の湊専務も優しかったけど、この河出専務もとても温厚で、話しやすい方だ。私はつくづく上司に恵まれてると思う。