日常に、ほんの少しの恋を添えて
「ここ、実は俺の同級生が経営する店なんだよ。だから知ってたんだ」
「そうだったんですか。私はてっきりよく女性と利用するのかと思って……」

 つい本音をぽろっと漏らすと、専務はとってもイヤそうな顔をする。イケメンが台無しだ。

「君の中で俺は一体どんなキャラなんだよ。知ってるだろ? 夜遅くまで仕事に忙殺されてること。のんびりディナーなんてそうそう来れないよ」

 確かに、私が会社から出るとき大概専務はまだ会社にいる。だけど、こんなイケメンでお金持ちだなんていう素晴らしいスペックを持った専務を、野放しにしておく女性は少ないのでは? というのが私の見解なのだが。

「でも彼女とか、いらっしゃるんですよね?」
「皮肉か。いない」

 え。そうなんだ。本当に?

「なんでいないんですか?」

 私が質問ばかりするので、専務は困ったように額を押さえた。

「なんでって……出会いもないし、暇もないし。たまにある休日は休みたいし。となると今は女性と付き合ったりとか、ちょっとキツイんだ。昔それでひどく怒られたこともあったしな」
「怒る? 専務をですか?」

 私が驚き専務の方に向き直ると、彼は「ああ」と言ってから煽るようにソフトドリンクを口にした。

「仕事のことで頭がいっぱいで、彼女に会ったりとか、電話したりとかあんまりできなくて。そしたら相手がキレて、怒られた。こんなんで付き合ってるって言えるのかって」
「……彼女さんは、寂しかったんですね」
「そうだな。だけど当時の俺はそんな彼女の心情をおもんばかることができなくて。結局別れることになったんだけど……ってなんでこんな話させられてんだよ」
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