日常に、ほんの少しの恋を添えて
 クスッと笑う専務。前にもこんなやりとりあったな。なんて思いながら、何気なく部屋の中を見回してみる。
 二十畳はあろうかという広いリビングに、昨夜私が寝かされていた黒いレザーのソファーセット。壁には大きなテレビが掛けられており、ソファーでくつろぎテレビを見る専務の姿が容易に想像できる。それに所々に置かれた間接照明が、明らかにおしゃれだ。

 さすが、御曹司。私が住む安アパートとは全然違うわ……
 専務にバレないように小さくため息をついていたら、キッチンカウンターに専務がお味噌汁の入ったお椀を置いた。

「それ、飲んで」
「ありがとうございます、いただきます」

 これって、本当だったら私がやらなければいけない仕事のような気がするんだけど。
 そう思いながら、ふわりと湯気が立ち上るお味噌汁のお椀を手に取り、いただいた。
 二日酔いの胃に染み渡る、優しい味だ。

「美味しいです。専務料理できるんですね、意外でした」
「何もできないとでも思ってたのか? 心外だな。こう見えて一人暮らし歴長いんだ、大抵のことは一人でできる」

 自分が飲む味噌汁を持って席につくと、専務もそれを食べ始めた。

「私、専務はご実家から通勤されているものと思いこんでました」

 でかい豪邸に住んでいるイメージだったので……
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