日常に、ほんの少しの恋を添えて
「いや。だからいいもん見させてもらったから、昨日の夜のことは気にしなくていい。これで帳消しだ」
「ええ~~、なんか私ばっかり恥ずかしい思いしてるようにしか思えないんですが……」
「いや、そんなことないぞ? 俺も十分いい思いさせてもらった。酔っ払って寝てる長谷川、なーんかぶつぶつ寝言言ってて面白かったし」

 寝言? 
 私は専務の言葉に反応し、動きを止めて彼を見る。

「ね、寝言って、何言ってました……?」

 んー? と何かを思い出し可笑しそうに笑う専務。

「いや、なんか『甘いもん食べたい』とか『ハンドミキサーがもうすぐ壊れる』とか、いろいろ口から漏れ出てたな……」

 私。なんで思ってること口に出しちゃうかな……
 自分にがっくりしつつ、私は再び手に取ったお味噌汁を飲み干した。

 そういえば先ほど、乾燥機のアラームがピーピー鳴っていたのを思い出した。

「乾燥機止まったみたいなので、私、着替えてきます」
「はいよ」

 恥ずかしくて真っ赤になったのを悟られないように小走りで洗面所に駆け込んだ。
 昨日着ていたカットソーにスカートは洗ってもらってあったし、ジャケットはハンガーにかけてあった。あと、ストッキングが見当たらない……と思って探したら寝室の布団の中にあった。
 私、無意識に脱いでいたらしい。

 着替えを終え、忘れ物が無いかチェックをしてから、寝室の布団を整えてリビングへ戻る。

「専務、色々お世話になりました。私帰ります」
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