日常に、ほんの少しの恋を添えて
「いつもあんななのか」
「え?」

 ちら、と彼を見る。

「いつもあんな風に酒飲むのか。酔っぱらって、吐くまでとか」
「とっ! とんでもない! あんなに飲んでしまったのは初めてです! むしろ初めてだから自分の許容量わかんなくて飲みすぎちゃったっていうか……いつもあんな風だなんて思わないでください」

 間違っても誤解なんかされたくない。
 そう思った私はついムキになって反論してしまう。

「そう? だったらいいけど。毎回なら改めた方がいいんじゃないかなって思っただけで」
「毎回だなんて……そもそも私お酒自体あまり飲みませんので。昨夜は……なんか、食事も美味しくてワインも美味しくて、その上幸せそうな新見さん見てたらお酒が進んじゃって……そんなことなかなか経験したことなくて、自分でもびっくりしてるんです。私、飲みすぎるとああなるのかって。ちょっとショックでした」

 ついつい、専務に自分の正直な気持ちを白状してしまった。

「まあ、その気持ちは理解できなくもない。結婚式で酒が進むことってよくあるだろう。主役の幸せオーラに、知らず知らずのうちにあてられてるんだよ、周りも」
「……そうですね、昨夜の私は完全にあてられてました。だからあんな醜態をおおおお」

 話しているうちに専務に口の中に指ツッコまれたことを思い出し、情けなくて顔を覆った。

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