日常に、ほんの少しの恋を添えて
「材料費とか、こういったラッピング用品とかで結構お金かかるんじゃないの? 本当に気なんか使わなくていいのよ?」
「あ、それはですね……材料は必要最低限ですし、ラッピングは全て100均です。なのでお気になさらず、です。こればっかりは好きでやっているもので」

 そう。卵は近所のスーパーの日曜市で先着30名様1パック限定10円の卵だし、小麦粉も日替わり奉仕品でお買い得だった。紅茶は実家から送られてきたものだ。

「そう? ならいいんだけどね……でも本当に無理はしないでよ? それよりあの夜専務にちゃんと送ってもらった? 私か花島が送るって言ったんだけど、専務がね自分の部下だから責任持って家まで送り届けるって言ってくれたから、ついお願いしちゃったの。こっちこそごめんね、付き添ってあげなくて」

 申し訳なさそうに両手を合わせる新見さんを見て、私はピタッと動きを止めた。

「……え……専務って、お酒飲んでなかったんですか?」
「うん。ずっとウーロン茶とかジンジャエールとか飲んでたわよ。結構ね、いつもそうなの。ホントはお酒大好きなのに、部署の飲み会の時とかは我慢して飲まないのよね。だから何かあったときっていつも専務が車出してくれるのよ。やさしいよね、そういうとこ」


 そうだったのか……
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