日常に、ほんの少しの恋を添えて
「そうなんですか! すごいですね」
「ふふ。長谷川さんだってそうなるかもしれないのよ? とっても可愛らしいし、細身でスーツが良く似合ってるもの。素敵な人に見染められたりしてね」
相変わらずニコニコしている新見さんを困惑気味に見つめる私。
……いや、ないでしょ。っていうか私感情表現下手過ぎで振られたばっかりなんですよ……傷が抉られます……
いけない、思い出したらちょっと胸の辺りがモヤモヤしてきた。やめやめ。
あっ、それより。聞かなければいけないことがあったんだった。
私は目の前で微笑む新見さんに向き直る。
「新見さん、私が秘書をさせていただく方ってもう決まっているんでしょうか……?」
「あ、そうそう! それが一番大事よね! 長谷川さんは藤久良専務についてもらいます。私が今担当秘書なんだけど、私結婚決まってね。彼の海外転勤についていくことになったので寿退社するの。だから……」
「へっ……」
藤久良専務!? 今、専務につけって言われた!? 私が!?
新見さんが話し続けているところ大変申し訳ないのだけど、私の頭は「藤久良専務」で容量がいっぱいになってしまった。
新入社員の私でも小耳に挟んだことがある。藤久良専務こと、藤久良 湊。
我が社が属する藤久良グループの御曹司にして、この会社の専務である彼は、まだ三十そこそこの年齢であるにも関わらず、才覚をめきめきと現し始めていると専らの噂の人物。
何でも彼が進めた買収案件がすべてスムーズに滞りなく完了し、彼が企画したリゾート施設も運営を開始してから黒字続きだという。そんな人の秘書になんで私が……
「ふふ。長谷川さんだってそうなるかもしれないのよ? とっても可愛らしいし、細身でスーツが良く似合ってるもの。素敵な人に見染められたりしてね」
相変わらずニコニコしている新見さんを困惑気味に見つめる私。
……いや、ないでしょ。っていうか私感情表現下手過ぎで振られたばっかりなんですよ……傷が抉られます……
いけない、思い出したらちょっと胸の辺りがモヤモヤしてきた。やめやめ。
あっ、それより。聞かなければいけないことがあったんだった。
私は目の前で微笑む新見さんに向き直る。
「新見さん、私が秘書をさせていただく方ってもう決まっているんでしょうか……?」
「あ、そうそう! それが一番大事よね! 長谷川さんは藤久良専務についてもらいます。私が今担当秘書なんだけど、私結婚決まってね。彼の海外転勤についていくことになったので寿退社するの。だから……」
「へっ……」
藤久良専務!? 今、専務につけって言われた!? 私が!?
新見さんが話し続けているところ大変申し訳ないのだけど、私の頭は「藤久良専務」で容量がいっぱいになってしまった。
新入社員の私でも小耳に挟んだことがある。藤久良専務こと、藤久良 湊。
我が社が属する藤久良グループの御曹司にして、この会社の専務である彼は、まだ三十そこそこの年齢であるにも関わらず、才覚をめきめきと現し始めていると専らの噂の人物。
何でも彼が進めた買収案件がすべてスムーズに滞りなく完了し、彼が企画したリゾート施設も運営を開始してから黒字続きだという。そんな人の秘書になんで私が……