日常に、ほんの少しの恋を添えて
 そんな表情を見ていたら断るのも悪い気がしてきて、もういいや……と、意を決し私は専務の横に並んだ。

「ではご一緒させていただきます。専務はどのショップに行かれるのですか?」
「仕事モードはいらねーよ。今日は休日だ。普段通りの長谷川でいいよ」

 歩き出した専務の顔を、隣からこそっと窺う。

「……いいんですか?」
「いいよ」
「似合わない服とか薦めたらボーナスの査定に響いたりとか……」
「そんな心の狭い人間みたいなことするかっ」

 って言いつつも顔は笑っている専務。
 予定外だけど、まあいいか。ごはんもついてくるし……

「じゃ、行きましょうか。途中で私の買い物もしますけど、いいですよね?」
「もちろん」

 なんだか、いきなりデートみたいになってしまったな、と思ったら急に心臓がばくばくしてきて、横にいる専務の顔が見れない。

「あ、俺ここ行きたい。いい?」
「どっ。どうぞ」

 専務が入っていったのはメンズのアパレルブランドのショップ。私でも知っているトラディショナルなスタイルが人気の有名なブランドだ。今日専務が着ている服も、何となくこの店の服っぽいような気がする。

「なにか目当てのモノがあるんですか?」
「いや、特に。いいものがあれば買う」

 ハンガーにかかっている服や、ディスプレイされている小物やセーターを見ながら専務が話す。

「……私、専務ってオーダーメイドの服とか着てるのかと思ってました」
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