恋愛預金満期日 
 僕はテーブルの上の水を一口飲み、大きく息を吸った。

「僕があなたを迎えに行かない訳が無いでしょ。僕がどれだけあなたを思っているのか知っているはずです……」


「私だって、迎えに来ないはずが無いと思っていました。でも、朝まで待っても来ないあなたに、自分の思い上がりだったんだって……」


「えっ! 朝まで待ったんですか?」

「しばらく待っていたら、終電が無くなったんです」

「そんな…… すみません……」

 僕は朝まで待っていた彼女に胸が苦しくなった。


「私の方こそ…… 私のせいで事故に……」


「違います。それは僕の不注意ですから。でも、どうして連絡くれなかったんですか?」
 僕は今までの想いに、言葉が強くなってしまった。


「えっ。だって約束だったじゃないですか? 他に好きな人が出来たら迎えに来ないって。だから連絡なんか出来る訳ないじゃないですか?」

「でも、美也さんとか、沖田建築の方とか。僕はあなたを探し回ったんですよ」


「あっ。それが…… 私、オーストラリアから戻ってすぐ、昔の携帯電話を洗濯機に入れてしまって…… 全部、データー消えちゃったんです。それで、誰とも連絡取れなくなって……」

「そ、そんな……」

「でも、私、美也さんに会いに、銀行行ったんですよ。でも、赤ちゃん出来て退職したって聞いて…… 神谷さんも窓口に居なくなっていて……」


「そんな最悪……」


 僕は頭を抱えた。
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