恋愛預金満期日 
「そろそろ、僕達も行きましょうか?」


 外へ出ると、辺りは薄暗くなっていて寒さに体が震える。

「わー。寒い」

 相変わらず寒さの苦手な彼女は白いマフラーに顔を埋めた。

「僕、暖かい場所に、転勤の異動願い出そうかな?」

 僕は寒さに震える彼女を見て言った。


「そんなのいいですよ…… お仕事へ支障を出さないで下さい。それに、寒い時があるから、暖かいって感じるんですよ……」

 彼女はチラッと僕の目を見た。

 僕は彼女の姿に、気持ちの高鳴りを押さえる事が出来なかった。

 僕は小さな体を思いっきり伸ばし、覆いかぶさるように、彼女をしっかりと抱きしめた。


「まだ、寒いですか? すみません…… 勝手にこんな事……」


「暖かいです……」

 女の言葉に、もしかして僕が皆の前で恥をかかないよう、指輪を受けとってくれたのではないかと思った。


 あれから三年だ。

 彼女に好きな人がいてもおかしくは無い。

 いや、彼女を男が放っておくはずが無い……

 
 僕はもう一度、勇気を振りしぼった。
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