恋愛預金満期日 
「僕が側に居ます…… 絶対に…… だから、もう一度聞いてもいいですか?」


「はい……」

「僕は、あなたが好きです。僕と、結婚して下さい……」

「はい。私もあなたに会いたかった……」

「本当ですか?」

「ずっと、探していました。この、暖かさを…… あの時、手放すんじゃなかったって、後悔した事もありました。でも、あなたが、待っていてくれると思ったから、オーストラリアで頑張る事が出来たんです」


「すみません。遅くなって……」

 僕はもう一度、彼女を抱きしめる腕に力を入れた。

 彼女の髪から、ほのかに優しい香りがし、彼女が僕の腕の中に居る事に改めて緊張が走る。

 でも、僕はもう、彼女を離す事が出来ない…… 


「いいえ。でも、一つお願いがあるんですけど……」

「なんですか?」
 僕は少し不安になった。

 又、スーツが合っていないのだろうか? でもいい、彼女の望みなら、僕は何でも従う……


「あの…… 今日、長野に帰る予定なんです……」


「えっ。そんな……」
 僕は思っても居なかった現実に愕然とした。

 やっと会えたのに、もう、離れなければならないのか? 

 まだ、僕は夢が覚めてしまうようで、怖いのに……


「でも…… 予約してあったバスが行っちゃったんですよね…… どうしよう? 一緒に居て頂けませんか? 一人でいたら、悪い人に連れて行かれちゃいますから……」

 彼女は僕の腕の中から、伺うように僕を見た。


 彼女の言葉と瞳に、僕の心臓は爆発した。

 腕の中の彼女が、愛しくてたまらない。


 僕は、返事より先に、彼女の唇を奪った。


 そして、ゆっくりと唇を離した…

 彼女の目から涙が落ちた……
 
 僕は親指で彼女の涙を拭った……


 「すき……」
 
 彼女の言葉に僕は抑えきれず、今度は深く唇を重ねた……

 何度も…… 何度も… 
 



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