意地悪な両思い


 次の週、早速私は下の部署の手伝いに参加した。

この間の金曜日は手伝いといっても、実質その半分が説明みたいなもので、別段特に役に立ってない。実質、この今日月曜日からが本当のスタートだ。


 というわけで、自分の仕事を午後14時ごろに切り上げると、簡単な挨拶だけ残して私は階段を降りてった。

「失礼します。」
 扉をあけると同時に、幾人かの社員さんに目線を寄越される。

お疲れ様ですと決まり文句の挨拶を交わし、雨宮さんの居場所を尋ねるとこっちですと待たされずに奥の部屋に案内された。

廊下を歩いていると、下の部署も上の階とフロア自体は同じ構造らしいことが分かる。ただまぁ、うちの階はガムテープとか板が廊下に当たり前のように転がってたりはしないんだけどね。


 コンコンコン―――扉を軽くノックする。

「雨宮さーん。市田さん来られました。」
 部屋の扉は開けっ放しだった。

あまり大きくない部屋の中央にテーブルがあって、その上には書類が散らばり大きな赤色青色の布なんかも置いてある。その周りで雨宮さんを含め、3人で作業をしているらしく、ここの床にも多くのごみが落ちている。

改めになっちゃうけど雨宮さんの部署は、こういう主にイベントを行う上での道具やら機材やらを準備したり、作ったりするところ。

だから、企画するだけおの私にとってはその光景そのものが新鮮で。
何にもしないでこうしてしばらく黙って見ていたい気もする。


「あ、市田さん!
もう手伝いに来てくださったんですか!」

「はい。」
 傍に寄ってきてくれた彼にぺこりと私は会釈した。

「助かります。猫の手も借りたい状況といいますか……」
 部屋の様子を見ながら苦笑いを浮かべる彼。

「今は何の作業中ですか?」

「あぁこれはデパートでやるヒーローのショーの準備で。」
 どうぞ入ってください。

彼はテーブルの上の書類の一枚を手に取った。

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