意地悪な両思い

「ラビッターっていう今子供たちに人気のヒーローらしんですけど、
市田さん知らないですよね?」
 これなんですけどと見せてくれたそこには、頭に二つ耳が生えた体の右半分が青色で、左半分が赤色のスタイリッシュなスーツのウサギがうつっている。

ただ“ウサギ”といっても、
顔はケッコウ凛々しく眉もごっそりふと眉で、

今これが子供たちに流行っているとは若干信じがたい感じ―――といいながら、テレビのコマーシャルでたくさん見かけているんだよなぁ。


「cmで今飲み物とコラボしてないですっけ?」
 最初はまさか、子供たち向けのヒーローだなんて思いもよらなかったけれど。

「お!さすが市田さん!」

「え?」

「ビンゴです!」
 雨宮さんは変に興奮の声をあげる。

「まさにそのcm繋がりなんですよ、これ。」

「えぇ?そうなんですか。」
 彼はこくっとうなずく。

「まぁ基本はその会社で小さなスーパーとかを回ってしてたみたいなんですけど、隣町のそこのデパートって結構規模大きいじゃないですか?

それでちょっとうちが噛むことになって。」


「へぇ……。」
 なんかうちの会社って結構すごいのかな……?

だって、あの飲み物ってみんなが飲むような一流企業のあそこのでしょう?


雨宮さんもそんな風に驚いている私に気が付いたのか、「すごいですよねぇ。」 と同調してくれる。

「速水さんが持ってきたのなんですけどね。」

「え?速水さん?」
 私の声に彼は深く頷いた。


「どうやって獲得したのかとかまではさすがに知らないんですけど、まぁ速水さんなら驚かないというかさすがやり手の営業というか。」

「速水さんってそんなすごいんですか?」

「そっか、市田さんはそんな営業の人と関わることないから知らないですよね。
あのひと本当すごいんですよ。

長嶋さんから聞かないですか?」

「いえ、全然……。」
 飲みの場の時もそんなことはちっとも。


っていうか肝心の本人でさえ、ちっとも進んで自分の仕事のことは話してくれたことないし。


「へぇ……そうなんですね。」
 そんな大きな営業が成功したなら教えてくれたっていいのになぁ。自慢してくれたっていいのに……。

< 44 / 140 >

この作品をシェア

pagetop