意地悪な両思い
宮崎さんはとても落ち着いた人だった。
細かいところにも目が行き届くし、
一つ一つが丁寧だし、
想像した通りといえばそうだが、それで私よりも年齢がひとつ下だというのだから驚きだ。
それに私が少しでも困っている素振りをみせたら、「市田さん大丈夫ですか?」そう言って私にすぐ声をかけてくれる。
「雨宮さんによくよく言われてますから。」
そう言って微笑む表情は、まだあどけなさを感じれてそのギャップに密かにやられてるんだ。
たぶん私だけじゃなくて、下の部署全員そうなんだろうけどね。
そんな彼女のおかげで最初の一週間はどうにか乗り切れ、例の金曜日。
「市田さんそれ終わったらあがってもらっていいよ。」
7時をまわったくらいに、パソコンに向かっていた私へ雨宮さんがひょこっと声をかけてくれた。
隣で作業していた宮崎さんも
「私あとやっておきますから、お疲れさまでした」と言って促してくれる。
素直に甘えると私は挨拶をして、自分の部署へと戻った。
「お、市田あがり?」
戻ってすぐに声をかけてくれた長嶋さんに
「はい、今日はもういいみたいで。」
簡単な報告をする。私の部署もいつもにしては結構残っていた。
「今日もありがとな。疲れただろ?
助かってるって下の子よく言ってるよ。」
「いえいえ、全然。」
そう否定しながらもわざわざ労いの声をかけてくれる彼の言葉は、私の疲れにじーんと染みた。
「長嶋さんもそろそろ帰られるんですか?」
デスクの上が片づけられているのを横目に尋ねると、
「あぁうん、今日はね。
週末はゆっくりしておいで。」
と珍しく飲みに誘ってこない。
私、疲れた顔してんだろうなぁ。
まぁ今日は速水さんと帰る日だから誘われてもごめんなさいする予定だったけど。
私は鞄を持って会社を後にした。