意地悪な両思い

「もしよかったら来週レンタルショップ寄りません?
速水さんおススメのとか知りたいし…。」
 どうかな?

ちょっと緊張してしまった私は、まだ解かないでいるシートベルトを握る手に自然と力が入った。


「あ、いやそりゃいんだけど。」

「うん?」
 けど?ってなんだとぱっと私は視線を彼にやる。
すると速水さんは珍しく慎重な様子で、頬を人差し指で二度かいて。


「ていうか俺の家に来ないかなーって。」


「え?」
 一瞬私はきょとん。

「俺の家DVDケッコウあるから。
市田と見たら面白いだろうなってこの間話した時も密かに思ってて。」

「あぁ…えっと。」
 予想以上の提案に頭の中がなかなか働かない。

「レンタルショップ寄って、何個か借りてもいいし。」

「うん。」
 そこでようやく意味を理解する―――そして、仕事帰りに速水さんの家に行くってのがどういう意味なのかも。


「どう?
やっぱ何回か来てるからとはいえ、躊躇いある?」

「いやそれは別に……」
 そうだよね、急に言われてびっくりしたけど付き合う前には看病しに行ったり、ごはんを食べに行ったり何度かお邪魔してんだ。しかも私本位だったし。


けど付き合う前で“そう”だったんだ。キスとかしてたんだ。
今は付き合ってる―――その事実があの時とは違う。


もしかして、もしかして……?


「別に変な意味じゃないから。」
 そう速水さん言ってるけど、意識しない方が無理だよね!?

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