意地悪な両思い

 そんな私の様子に気を遣ったのか、

「まぁまた考えといてくれたらいいよ。
来週じゃなくてもいいし。」
 と言って、変に微笑んで彼は話を切り上げようとする。

「あ、いや!」
 そんな速水さんをすぐに私は引き留めた。


「来!週で……。」
 そう答えた私の口調は、“ら”が以上に大きな声で、“で”はすごく小っちゃい。


そんなへんてこりんな感じだから益々恥ずかしくなって、ゆでだこみたいに頬がなってるのが自分でもわかる。


 だから言葉を発し終えて、すぐに私は膝小僧に視線を逃げ込ませた―――変に意識してることが絶対速水さんに伝わったと思ったから。


速水さん、からかってくるだろうな。
「なに、その言葉遣い」とか「あほなイントネーションだなぁ」とか。

けど、彼が発したのは思いもよらぬ言葉。
すっごくすっごく嬉しい言葉。


「……まじか。」

 そう、手の甲で表情を隠しながら。


「っ。」
 それがどういうときにする仕草か私は知っいる。
照れやな彼が、素直じゃない彼が

感情を無理やり隠す。


「断れると思った……。」

「な、なんでですか。
断るわけ、ないよ。」
 いじらしくて、彼の左手のスーツをきゅっと掴む。

その顔が見たいってのも理由の一つだけど。


 だがそうしても尚、彼はぷいっと外に顔を向けて私の方を見てくれない。
いつか見たいなぁ、速水さんが私みたく顔を真っ赤に染めてるとこ…。

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