エリート御曹司とお見合い恋愛!?
 色々思いめぐらせていると、あっという間に一階のエレベーターホールにたどり着いた。この時間、あまり人はいないが、それでも入れ違いに何人かがやってきたエレベーターに乗り込む。

 そして疑うことなくエントランスの方に足を進めようとすると、倉木さんに制された。

「ごめん、こっちに乗り換えて」

 踵を返して、指示された方のエレベーターを見て私は目を丸くした。

「えっと」

「行ったことないでしょ?」

 なにか言おうとする前に倉木さんが悪戯っ子のような笑みを浮かべた。足を進めたエレベーターは、VIP専用と言われる五十五階と屋上に直通するものだ。

 行ったことないどころか、このエレベーターを利用したことさえない。ビルの中になにがあるのかなどは、仕事柄すべて把握している。

 五十五階は会員制のラウンジだ。アッパーフロアの、ほんの限られた人しか利用できないと聞いていたが、まさか倉木さんも会員だなんて。

「接待とかで、たまに利用するんだよ」

 驚いた表情を読んだのか、倉木さんが答えてくれた。やっぱり倉木さんはすごい人なんだ。エレベーターは他のものとは違い、広くて内装にも凝っていた。

 なんだかいい香りまでする。きょろきょろと顔を動かしていると、倉木さんは息を吐いてエレベーターの側面に背中を預けた。その何気ない横顔に目が離せなくなる。

「私、行っても大丈夫ですか?」

 楽しみと言うより、不安しかない。しかしエレベーターは止まることなく、数字のパネルが、どんどん上昇を示していく。エレベーターから見える光景に心奪われることなく、緊張と不安で足が竦んできた。
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