エリート御曹司とお見合い恋愛!?
「大丈夫だよ、そんな怖いところじゃないから」

 私の心配を取り除くように、倉木さんに優しく声をかけられる。自然に頭に手を置かれて、私の心臓は違う意味で煩くなった。

 やっぱり倉木さんとは住む世界が違いすぎるのだ。そうこうしているうちにエレベーターが止まり、このB.C. square TOKYOの最上階までやってきた。

 緊張して上手く息もできない。それでも倉木さんが隣にいるだけで、心強かった。ラウンジの前にクラークがあるが、とくに預けるものもない。

 正装したスタッフに案内され、私は、このビルに勤めて初めて五十五階に足を踏み入れることになったのだ。

 黒とダークブラウンを基調とした内部は、落ち着いた音楽に間接照明のみで、どうも薄暗い。けれども、ガラス張りになっているので、東京の街の明かりが、十分な輝きをもたらしてくれていた。

 スーツを着た男性たちを中心に、接待と思われる人たちや、個人的に楽しむ人、綺麗な女性を連れての人など様々だ。私はすっかり雰囲気に呑まれてしまい、ただただ呆然とするしかできない。

「こっちにおいで」

 固まっている私の肩を、なんの躊躇いもなく倉木さんが抱いて促してくれた。一歩間違えればセクハラになりそうなものを、それを全然嫌味なくしてしまう。

 景色を堪能できるボックス席に案内され、私は水から上がったかのごとく、長い息を吐いた。
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