エリート御曹司とお見合い恋愛!?
「どうしました? 気分でも?」

 心配げに尋ねると、倉木さんは私からふいっと視線をはずし、わざとらしくヘリコプターの天井を見上げた。

「いや、俺高いところ自体は平気なんだけど、どうもこういう地に足がついてない系って苦手なんだよね」

「ええ!?」

 まさかの事実に私は驚きが隠せない。そんな我々に藤野さんが口を挟む。どうしてもプロペラの音が煩くなり、全員が声を張り上げる形になっていた。

「今まで社長が一緒に乗ろうとお誘いしても、すべてお断りしていましたしね」

「あいつのは分かったうえでの嫌がらせなんだって」

 苦々しく返す倉木さんに、私はひとりはしゃいで申し訳ない気持ちになってきた。

「あの倉木さん」

 なにか言おうとすると、倉木さんの腕が伸びてきて、私の頭に触れた。

「そんな顔しない。もう少しでフライト終わるから、しっかり夜景を楽しみなよ。美緒は好きなんだろ?」 

 私は、はい、と力なく答えた。そして倉木さんから外の方に顔を向ける。窓越しに映った自分の表情は、とてもではないが見せられそうにない。

 自惚れかもしれない。けれど苦手なのに、こうしてわざわざ段取りをしてくれたのは、ほかの誰でもない、私のためなんだ。

 どうしよう、こういうときどういう感情になるのが正解なの? 申し訳ない気持ちと、嬉しく思ってしまう自分がいて、答えが出せない。

 十五分ほどのフライトはあっという間に終わりを迎えた。けれど、今日見た光景は一生忘れることはないと思う。
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