おはようからおやすみまで蕩けさせて
ケータイは見つからないけどもういいや。
このままもう少しだけ寝よう。


柔らかい毛の様な感触を撫でながら微睡みかけた。
くしゅくしゅと指先で揉むようにして遊んでいたら、「いい加減にしろよ」と声がする。


(…ん?誰の声?)


何処かで聞いたことのあるようだと思うけど、きっと夢だろうと解釈した。


(気にしないでおこう。とにかくもう少しだけ寝るんだ)


今日の休みは一日中これで潰れてしまいそうだなぁ。
そう言えば私、昨夜はお風呂に入ったんだっけ……?



「……頼むから髪の毛引っ張ったまま寝込むのは止めてくれよ。結実」


名前を呼ばれても尚、夢だと思おうとしたけど。


(…ん?)


流石にそういう訳にもいかず考えだす。
この声は、いつも聞いてきたあの人ではないよねーーー




バチッ!!


下睫毛とくっ付いていた上睫毛を引っぺがすようにして目を開けた。
目の前の視界に映る人が、少し驚いた様な目元をしている。


「…やっと起きたか?」


横を向いたまま問いかけられた。
どう見ても天宮さんにしか見えないけどホンモノ?


「おーい、結実?」


チラチラと目の前で手を振っている。
微かな風を感じて、それがどう見ても夢ではないと確信したーー。




「ひぃぃ!」


慌てて髪の毛を掴んでいた指先を開く。
ガバッと起き上がり、彼と目を見合わせた。


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