おはようからおやすみまで蕩けさせて
津田ちゃんの声に考えるのを止めた。
今はとにかく真剣に相手の言うことを聞いて対応しなくちゃいけない。


そう思うんだけど、どの商品を見ても魅力的には思えなくてーー。



「何となくどれもイマイチだわ」


ついポロッと言わなくてもいい一言を呟いた。
メーカーの開発担当者がピクッと頬の肉を引き攣らしてる。


「あ…すみません。つい…」


リーダーとして仕事をする限り、個人的な感想はナシにしないといけなかったのに。


「どの辺りがイマイチですか?」


具体的に教えて欲しそうな顔をされ、商品を眺めてみるけど思い浮かばない。
パッと見の感想を述べただけで、思いがあって言った言葉ではないから。



「うーん」


いつもなら毒舌と称されるくらいにズケズケと批評してるのに、今日は何だかそれも難しい。
山本さんに「デキない上司」だと言われたことが、変に胸の何処かに引っ掛かってる。


側で私の様子を見てた津田ちゃんが焦るような眼差しを向けてきた。
目の前にいる開発担当者も少しイラッとしてるように感じる。

そんな人の視線ばかりを気にしてしまう所為か、ますます思考力が低下していって……


「すみません。ただ漠然と思っただけなんです」


バイヤーとして恥ずかしい言葉を述べてしまった。
メーカー側は呆れ、津田ちゃんはえっ?という顔をした。


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