おはようからおやすみまで蕩けさせて
一気飲みしたシャンパンの効果で少しほろ酔い気分になっていたにも関わらず、大厄が明けた嬉しさと商談が決まった後の喜びが合わさって、ついつい飲むピッチが速くなっていった。



「美味し〜い」


天宮さんは誕生日だ知ると、「今夜は奢るよ」と言ってくれた。
何でも好きな物を注文していいと言うので、遠慮なくホタテのバター焼きをお願いして頬張った。


「この貝柱の甘み、サイコーです!」


モグモグとヒモも一緒に噛み締めていると、どんどん旨味が増してくる。


「上機嫌だな」


「だって、天宮さんの奢りですからー」


ホッケも食べたいなぁ…と呟けば、頼んでやろうと店員を呼ぶ。



(ふふふ…)


声には出さず心の中でほくそ笑む。
まるで私の言いなりのような天宮さんが今夜はとっても可愛く見える。



(いいなぁ…こういうのも…)


酔った勢いであれこれとお願いしてみたらどうなるんだろう。
今夜だけならいいとか言ってくれないかなぁ。



「……ねぇ、天宮リーダー」


ぼぅっとした眼差しで見つめると、少しも酔ってない目元で見つめ返される。


「何だ?」


七年前から見てるけどカッコ良さは変わらない。
こんな人の奥さんになれたらきっと幸せだろうなぁ。



「……私…結婚したいです…」


これは酔った上の戯言だから、きっと本気にはされない筈だ。


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