【完】君しか見えない
「すごい濡れてる……」
私は握りしめていたハンドタオルを、楓くんの頭へと伸ばした。
濡れた髪を拭こうとしているのを察してくれたらしく、私より20センチほど大きい楓くんは前屈みになり頭を少し下げる。
「ハンドタオルしか持ってなくてごめんね」
布面積が小さいから、乾かすのにも限度がある。
すると、水の滴る前髪の間から、楓くんがこちらを上目遣いで見つめてきた。
「相変わらず準備いいな、おまえ」
「へへ、良かった」
感心したように言われて、バッグにハンドタオルを入れておいた自分を褒めたくなる。