【完】君しか見えない
やっぱり楓くんの笑顔が好きだ。
その瞳がアーチ型を描く時、同じくアーチを描いて私の心に虹がかかったかのような気分になる。
今、すごく幸せだな。
笑顔でいるこの瞬間を噛みしめながら、前を向いた時。
……コツン。
不意に、手の甲と手の甲とがぶつかった。
思わずどきりと心臓が跳ねて、反射的に手を引っ込めようとする。
だけどそれより早く、その手を楓くんの手が捕まえていた。
そしてそのまま、指を絡めるようにして、ぎゅっと握りしめられる。
大きくて長い指は、あっという間に私の手を包み込んでしまう。
「おまえは、目離すと勝手にいなくなるから。
黙って捕まえられといて」
「……っ」
思わず息を詰める。
自分の頬が、一気に熱を持つのを感じた。