【完】君しか見えない
反射的に顔を上げ隣を見ると、楓くんは反対側を向くように少し顔を逸らしていて。
こちらからその表情は窺えないけど、なんとなくピアスで飾られた耳が赤くなっていて、私は思わず固まる。
……えっ?
今、かわいいって言った……?
「楓くんって、手フェチだったの?」
何年もの付き合いだって言うのに、初めて知った……!
もしかして、言いづらかったから照れてるの?
そんな重大な秘密を私に打ち明けてくれたなんて……嬉しいよ楓くん……。
「はぁ?ふざけんなばか。
変なこと考えてるだろ、その顔。
そんな性癖持ってねーわ」
秘密を打ち明けてくれたことに感激して目を潤ませていると、すかさず鋭いツッコミが飛んでくる。
「え?違うの?」
「ちっさい手も、手握っただけで顔まっかにさせてるおまえも可愛いって言ったんだよ。
つーか、頼むからこんくらい察して」
「……っ」
私の許容範囲を軽く超えた予想外の言葉に、混乱する。
どういう理由でそんなことを楓くんが言ったのかわからなくて、思考がついていかない。