【完】君しか見えない


「で、でも、私なんて……」



目が合うだけで怖がられる私なんて、〝可愛い〟とは無縁なのに。



すると楓くんは、前を向いたままぽつりと言った。



「もう何度も思ってるよ」



「え?」



あまりにもさりげなかったせいで聞き取れず、反射的に楓くんを見上げて聞き返した時。



「ほら、おまえがぽけーっとしてる間に着いた」



楓くんが顎をくいと少し上げ、なにかを指し示した。



それに促されるように前方に目を向けると。



「あっ……」



思わず感嘆の声が漏れた。



だって目の前には、一面黄色のタンポポ畑が広がっていたのだから。

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