【完】君しか見えない
駆け寄り、目を輝かせながらタンポポ畑を一望する。
「わぁー、すごいっ……」
木々が円形に生えていない部分の真下に、タンポポ畑はあった。
まるで、木々たちが邪魔しないようにしてるみたいに、タンポポ畑の上方だけは青空が広がっている。
陽の光が差し込む様子は、とても神秘的だ。
その光を受けるタンポポたちは、鮮やかな黄色に輝いている。
「こういう場所、すっごく好き!
連れてきてくれてありがとう、楓くん!」
笑顔で振り返ると、ポケットに手を入れたまま遅れるようにしてこちらへ歩いてくる楓くんも口元を緩めた。
「おー、ぶんぶん振ってる尻尾が見える」
「だって絵本の中に来たみたいなんだもん!」
昔読んだ絵本の中に出てきそうな、そんな光景だった。