【完】君しか見えない
「まさに、秘密の名所だね」
「だな」
隣に並んだ楓くんを上目遣いで覗き込むように笑えば、楓くんも秘密を共有するいたずらっ子みたいな笑みを返す。
こうしてタンポポ畑を見つめていると、冬なのに心と体がぽかぽかしてきて。
私は胸いっぱいに大きく息を吸い込んで、目の前の景色を改めて視界いっぱいに収める。
……夢をみてるみたい。
「この時期に、こんな綺麗なタンポポ畑が見られるなんて思ってもみなかった……」
「俺も初めてここ見つけた時は驚いた。
おまえが引っ越してから見つけたんだよね。
冬でも咲いてるなんて強いよな、こいつら」
「うん」
「十羽が帰ってきたら、ここに連れてきてやりたいって思ってた。
まぁ、また会えるなんて思ってなかったけど」
私は目を伏せ、微笑んだ。
「ありがとう」