【完】君しか見えない


「俺さ、なにかいいもん見つけると、絶対十羽に見せたいって思うんだよね。
いつだっておまえは、俺の心の一番でかいとこ占めてる。
いつだっておまえの笑顔ばっかり思ってる」



「楓くん……」



楓くんがこちらに体を向けたので、私も楓くんの方へ体を向ける。



すると、なにかを決意したかのように揺るがない瞳をした楓くんが、そこにはいた。



「ごめんな、今までたくさん傷つけて」



「……っ」



まっすぐにこちらを見つめる強い眼差しに、ぐっと心を捕らえられて、思わず言葉を忘れる。


首を振ることもままならなかった。



意識すべてを楓くんの瞳に奪われてしまったみたいに、なにも考えられない。



ただ、楓くんの瞳が宝石みたいに綺麗だと、そう思った。



「十羽」



楓くんの手が伸びてきて、私の髪を撫でた。


慈しむように、そっと、優しく。



そして、私の瞳をまっすぐに射抜いたまま、言葉を紡いだ。



「──おまえが、好きだよ」



楓くんの唇が動くのを、ただ見つめていた私は、まばたきすらも忘れて目を見開いた。

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