【完】君しか見えない
楓くんの声がそう答えたのを、私はこの耳ではっきりと聞いた。
……そう、だよね。
楓くんの背中が、一瞬にして、手を伸ばしても届かないくらい遠くなったように感じられて。
「ニーナちゃんもひとり?」
「友達と点灯式行く予定だったんだけど、楓くんも一緒に行かない?
楓くんがいたら友達も絶対喜ぶし!」
「まじで?
俺いたら、友達びっくりしちゃうんじゃない?」
「むしろ、楓くんのこと生で見たら、あまりのイケメンさに倒れちゃうかも」
「はは、なにそれ。
ニーナちゃん口上手すぎだから」
私に対する態度とは違う優しい口調の楓くんと、女の子の弾む声を聞きながら、私はその場を離れていた。
楓くんの背中が私に、離れろ、そう言ってる気がして。