【完】君しか見えない
人の流れに逆らうように歩く。
さっきいた場所から、遠く遠くへと。
楓くんはあの子とツリーを見るのかな。
楓くんをツリーのもとへ、連れて行ってあげたかった。
でももしかしたら、それは私の役目ではなかったのかもしれない。
思えば思うほど自己嫌悪に苛まれ、心と共に足も重くなってきた。
だれも私のことなんて気づかない。
でも今はそれがちょうど良いと思った。
「……まったくもう!
どんよりしないどんよりしない!」
ぱんぱんと頬を叩き、自分を奮い立たせる。
ただでさえ怖いと言われるこの顔で、眉間にシワなんて寄せていたら、極悪人ヅラでしかないもんね。
と、その時だった。
ゴロゴロ…と不穏な音を耳にしたのは。